1.耐震診断とは

1995年の阪神淡路大震災では、新耐震基準(1981年決定)以前の基準で建てられた建物に被害が集中しました。このことから、旧耐震基準で設計・施工された古い建物が、大地震時に倒壊・崩壊する危険性がないかの評価が必要になってきています。

新耐震以前に建てられ、耐震診断や耐震改修などによって現行の法律の適用を受けていない建築物は、「法違反」とはなりませんが「既存不適格」といわれます。「耐震診断」はこれらの「既存不適格建物」が現行の「新耐震基準」と照らし合わせ、どの程度の耐震性能を持つかを評価することです。阪神・淡路大震災の被害状況からその必要性が指摘され、1995年より「耐震改修促進法」が施行された経緯があります。

●1981年に改正された新耐震基準では、

建築物が、大地震時に必要な「保有水平耐力」(建物が地震による水平方向の力に対して対応する強さ)を保有しているかどうかを検討する旨を規定しています。一般的に建物の耐震強度がⅩ%と言われる事は、保有水平耐力が必要な耐力のⅩ%である場合を指しています。

●1981年以前の旧基準の建築物は、

設計法が現在と異なるため、「保有水平耐力」に基づく方法で耐震性の検討を行うことはできません。このため、耐震診断では建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標:Is値を計算し評価値としています。

「耐震改修促進法」では耐震指標の判定基準を0.6以上としており、それ以下の建物については耐震補強の必要性があるとしています。判断基準は以下のように示されます。

Is値が0.6以上 倒壊し、又は崩壊する危険性が低い
Is値が0.3以上 0.6未満 倒壊し、又は崩壊する危険性がある
Is値が0.3未満 倒壊し、又は崩壊する危険性が高い

耐震性能は、以下の式により求められます。
Is = E0×SD×T

* E0: 保有性能基本指標(建物が保有している基本的な耐震性能を表す指標)
→Is 値を求めるにあたって最も重要な指標
= C(強度の指標)×F(粘り強さの指標)
* SD: 形状指標(平面・立面形状の非整形性を考慮する指標)
1.0 を基準として、建物形状や耐震壁の配置バランスが悪いほど数値が小さくなる
* T: 経年指標(経年劣化を考慮する指標)

●「耐震改修促進法」ではIs値≧0.6についての安全性とは「地震の震動及び衝撃に対し倒壊し、又は崩壊する危険性が低い」と評価されています。また、旧建設省の告示(平成7年12月25日 第2089号)によるIS値及び保有水平耐力(q値)の指標を参考までに示します。

Is<0.3 または q<0.5 地震の震動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性が高い。
0.3≦Is<0.6 または 0.5≦q<1.0 地震の震動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性がある。
Is≧0.6 かつ q≧1.0 地震の震動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性か低い。